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「宇宙の仕事で生きるものはビジネスの世界でも生きる」宇宙飛行士・大西卓哉さんの“コミュニケーション力”とは?

独占インタビュー! 元パイロットならでは。宇宙飛行士・大西卓哉さんの仕事術②

チームの成果最大化のために、ミスの共有を

 

――改めて、読者のビジネスマンにアドバイスをいただけないでしょうか。

 宇宙飛行士も一人のビジネスマンであり、宇宙の仕事で生きることはビジネスマンの世界でも生きる、と私は思います。また逆も然りで「仕事のコツ」という所は互いに共有できるのではないのでしょうか。

 これまで述べてきた、準備の大切さ。もうひとつは「ミス」に対する考え方です。人間は絶対にミスをする生き物なので、それを前提に仕事を考えるということです。手順の中でミスをしそうだなと思う所があれば予め、ミスをしないようなやり方に改める。

 そしてもっと重要なのはミスをした後です。ミスはしてしまったら絶対に隠さないこと、これは宇宙ステーションでは絶対条件です。一人がミスしたポイントは他の人がミスするポイントでもあり、そこを共有することがチームの後々の財産になっていきます。私も滞在期間中は、操作手順を間違えたり、数々のミスを犯しましたがその都度地上の人に助けてもらいました。周りの人も怒るのではなく、「どうしたら次からそのミスを防げるのか」という観点で動いています。

 ミスの共有の大切さはパイロット時代にも徹底的に教え込まれました。パイロットになるための訓練中、何度も試験があるのですが、同じ試験に2回連続で落ちるとその時点で不合格という厳しいものなのです。そこではミスの共有がとても重要でした。同期で何チームかに分かれて試験をするのですが、最初のAチームが何かやらかしたとする。そして次にBチームが同じ失敗をしたら、怒られるのはBチームではなくAチームなんです。「何でお前たちは次に受けにくる連中に自分たちがやった失敗を伝えなかったんだ」と、試験管もそこを見ている。これが受験勉強とかの考え方だと、自分がミスをする=減点なので、ライバルたちにも同じかもっと大きいミスをしてほしいという風になると思いますが、パイロットはそうではないんです。

 一般ビジネスマンの方も会社というチームの中でこういった意識を共有できるといいのではないでしょうか。

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大西 卓哉

おおにし たくや

JAXA宇宙飛行士。前職は旅客機パイロット(全日本空輸ボーイング767型機副操縦士)。



2016年7月~10月、ISS第48次/第49次長期滞在クルーのフライトエンジニアとしてISSに約113日間滞在。



滞在中は、日本人初のシグナス補給船のキャプチャを遂行。「きぼう」日本実験棟船内に新たな利用環境を構築するとともに、様々なミッションを実施した。


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